ぶらぶらBG3 06
仲間たちの登場
シャドーハートと二人で墜落したノーチロイドの周囲を探索します。共に旅をする仲間たちとの出会いの場面ですね。

茂みを覗いているハーフエルフの男性。彼の名はアスタリオンです。
インテレクト・ディヴァウラーを茂みに追い詰めたという彼は、それを殺すよう主人公に頼みます。その申し出を断ると、背後から襲われナイフで脅されます。
“I saw you on the ship, strutting about whilst I was trapped in that pot.”
「船でお前を見たぞ。俺はあのポッドに閉じ込められていたが、お前は歩き回っていたな」
こちら”strutting”には闊歩するなどの意味があるので、俺は閉じ込められていたが、お前は悠々と歩き回っていたな。と、状況を対比させることで強くこちらを疑うニュアンスがあります。
説明しようとするが聞いてくれないというやりとりの最中、アスタリオンが突然の痛みに悲鳴を上げたところで、ナレーションが入ります。
“Your mind twists. You're looking out of unfamiliar eyes, prowling dark, busy streets. You try to hold the memory, but it fades to the worm, the light, the fear. “
「あなたの心がねじれる。見慣れない目を通して景色が見え、暗く賑やかな通りを徘徊している。記憶を保持しようとするが、記憶が虫へ失われていく。光へ、恐怖へ」
ここがおそらく本作の体験を通して最初に出てくる本格的な謎字幕ではないでしょうか。「記憶が虫へ失われていく」ですね。これだけ見ると、幼生によって記憶が奪われていくかのように思えますが、原文でのニュアンスは全く異なります。
まず”You try to hold the memory,”「記憶を繋ぎ止めようとする」あるいは「保とうとする」という部分があり、その後に”but it fades to”「しかし消えていく」となります。なにに消えていくのかという対象として、並立した列挙で”the worm,the light,the fear”とあり、幼生、光、恐怖といった三つの要素が並べられます。
一度再翻訳の結論を出しておきます。
「「あなたの心がねじれる。見慣れない目を通して景色が見え、暗く賑やかな通りを徘徊している。記憶を保持しようとするが、それは幼生、光、恐怖へと溶けていく(消えていく)」
日本語字幕では「記憶が虫へ失われていく。」と句点が打たれているため、余計に幼生に奪われているというようなニュアンスが強くなってしまっていますね。
整理しつつ全体を見ます。御存知の通りアスタリオンはヴァンパイアなんです。厳密にはヴァンパイア・スポーンと呼ばれる存在ですが、それについては今は割愛させてください。
そのため光は本来、彼にとって天敵なんですね。どの程度天敵かと申しますと、作中で別のヴァンパイア・スポーンを日光に晒すというシーンがあるのですが、たちまち肌が火傷に爛れ、さながら拷問という光景になります。それくらい彼らにとって触れられないものなんですね。
暗く賑やかな通りとは、バルダーズ・ゲートの裏通りのような場所と思われます。日の当たりにくい場所を歩いていたわけですね。そこで拉致され、幼生や光という様々な恐怖に襲われ、それが原因でこの近辺の記憶が不鮮明になっているという描写かと思われます。
アスタリオンは今、昼日中の野外にいますがそれはいいのかという点については、しばらく後に作中で説明されますので今は割愛します。
アスタリオンに、マインド・フレイヤーの虫が我々を繋いだのだと教えます。
“The worm, of course. That explains things, somewhat. And to think, I was ready to decorate the ground with your innards. Apologies.”
「ああ、あの虫だろうさ。それで説明がつかないこともない。もう少しでお前の内蔵をぶちまけてしまうところだった。すまない」
訳はごく自然です。面白い部分として、このぶちまけるのところですが”decorate”が使われています。「飾る」ですね。アスタリオンらしい言い回しで、意訳で遊べそうな部分です。「もう少しでここに真っ赤な絨毯を広げるところだった」などのようにしても面白いかもしれませんね。
自己紹介を交わし、なんとか緊張した空気が和らぎます。ここでは「私もバルダーズ・ゲート市民だ」を選択しています。
“Is that so? We clearly move in different circles. So, do you know anything about these worms?”
「そうなのか?我々の居場所は違っていたようだな。あの虫について何か知っているか」
特に引っかかるところはありません。生きていた社会や環境が異なる”different circles”というところですが、彼はヴァンパイア・スポーンですから、物理的な意味で日の当たる場所を歩けませんし、ヴァンパイアは独自のコミュニティを築いて生活していますので、一般人と直接接触する機会は限られています。その皮肉も込められた部分ですね。
「残念だけど、我々はあれによってマインド・フレイヤーにされる」と答えます。
“Turn us into… Ha! Ha ha ha ha ha! Of course it’ll turn me into a monster. What else did I expect? Although, it hasn’t happened yet.”
「マインド・フレイヤーに…ハッ…ハハハ!そうか、そうなるだろうな。わかりきっていたことを。だがまだ変異は始まっていない」
ほとんどそのままです。強いて何か言うとすれば、”What else did I expect?”この部分には「俺は何を期待していたんだろうな」という自嘲気味なニュアンスが含まれているそうです。
“ If we can find an expert, someone that can control these things, there might still be time.”
「もし専門家を…つまりあれを操れる人物を見つければ、まだ間に合うかもしれないということだ」
以降やや省略しますが、最終的にアスタリオンをパーティーに勧誘し、旅の仲間として同行することになります。
“You know, I was ready to go this alone, but maybe sticking with the herd isn't such a bad idea. And you seem like a useful person to know. Alright, I accept. Lead on.”
「一人で行く気だったが、群れで行くのも悪くないかもしれないな。それに、お前と知り合っておいて損はなさそうだ。いいだろう。ついていく」
ヴァンパイアとヴァンパイア・スポーン
ではヴァンパイアとヴァンパイア・スポーンについて共有します。まず単純にヴァンパイアは吸血鬼。スポーンとはその下僕と考えて差し支えないかと思います。
彼らはアンデッドに分類されます。ゾンビやスケルトンのようにいかにもという見た目ではありませんが、死体から蘇った存在ですのでここに分類されているようです。
基本的には生前の能力を全てもったままで、その上さらにヴァンパイアとしての力を持つようになるそうです。具体的には吸血や変身、そして視線だけで心の弱いものを支配する能力。ネズミ、コウモリ、オオカミなどの獣を操る能力などが挙げられるようです。変身と一口にいってもその姿は多様で、先述のネズミ、コウモリ、オオカミなどの他に、ガスとなって移動することもできるそうです。これは肉体が致命傷を負った場合にも利用され、どこかにある自分の棺へと逃れ、回復しようとするそうです。ちなみに青白い肌などの見た目については、化粧で隠すそうです。
彼らは能力だけでなく、生前の記憶を持っている場合も少なくないようです。ただしどれほど元が真人間であろうと、多くの人情は執着や嫉妬へと変貌してしまい、ヴァンパイアとなったあとに生前の人間性を期待するのは無謀ということだそうです。
そしてヴァンパイアの多くは、自らが吸血した対象を下僕、つまりヴァンパイア・スポーンに変えて手駒を増やそうとするそうです。アスタリオンはこの位置、ヴァンパイア・スポーンですね。
ヴァンパイアとの大きな違いは、犠牲者をヴァンパイアに変化させる能力がないということのようです。これを行うには、自分の主であるヴァンパイアの血を吸い、自らが完全なヴァンパイアになるしかないそうです。
ただし当然ですが、ほとんどのヴァンパイアはこのような事態を避けるそうです。支配権を失うことを恐れ、スポーンにそのような能力を与えることはしないのが普通のようです。
もっとねずみ算式に駒を増やしたほうが効率的ではないかとも思いますが、ヴァンパイアにとって自分の血をスポーンに与えるというのは、ただ能力を与えるだけでなく、主従関係に影響を与える可能性があるからだそうです。
多くのヴァンパイアは単独行動を好むようですが、その例外を発生させるのが、ヴァンパイア・ロードという存在だそうです。
これは特に強力なヴァンパイアであり、群れを統率する存在です。ロードの支配下では複数のヴァンパイアが集団生活を営むこともあるそうです。ただ、基本的には一匹狼気質というのが前提ではあるようですね。アスタリオンが先ほど、言っていたセリフにもこの辺りの性質が伺えます。
ちなみに、主人が何らかの形で死亡した場合も、その支配下にあったスポーンたちは自由を得るそうです。
少しだけ憶測の話をします。
ヴァンパイア・スポーンが主人の血を吸い、その支配権を揺るがすという点ですが、スポーンがなにか主人から一定以上の距離を離れられないとか、常に監視されているとかそういう物理的な、あるいは魔法的な束縛があるような記述は、調べる限り見当たりませんでした。
つまりこれは状態が解除されるというより、スポーンを作る能力を得ることで、別の勢力となる可能性をもつことであったり、同格の力を持つことで主従関係を維持できないというような、ヒエラルキーの変化を意味するように思えます。ただこれは私の憶測です。
瀕死のイリシッド
ノーチロイド船内に、瓦礫に挟まれて動けなくなったイリシッドを発見します。
“This is the thing that abducted you”
「これはあなたをさらった張本人」と日本語、原語双方で語られていますが、おそらくは本当にこのイリシッドが主人公を直接拉致したというよりは、イリシッドという種族全体を指したものと思われます。あるいは、このノーチロイドの乗組員という意味での張本人かと思われます。
このイベントの訳ではそれほど混乱する箇所はないかと思います。イリシッドと相対したときに敵意や憎悪が奇妙に捻じ曲げられ、同情や愛などのあり得ない感情がよぎることが描写されています。やがてイリシッドが欲しているものが自身の脳であると気づいた主人公は、それに抵抗するか、この精神の綱引きに敗北し死亡するかという展開に繋がります。
強いて言うなら「復讐の爪が襲いかかる」という部分は、”But then its grip claws back with a vengeance,”「執念深く爪を立てて戻り…」などの翻訳が考えられます。つまりこのやり取りの中で一度は失われかけたイリシッドの精神支配が執拗に襲ってくる様子を比喩を織り交ぜて表しているものでしょう。
ここからすこし妄想混じりのお話になりますが、ここの英文を読むのが僕にはかなり難しかったんですね。といっても、おおよそ日本語字幕の通りに読むだけなんですが、よくよく読むとちょっと面白そうに見える、奥行きがありそうに見える、という意味です。
”Your mind's fuse, lusting for something that is gone. “
この部分、作中字幕は「心が融合する。何か…失われたものを欲している」
となっていて次にに”But then its grip claws back with a vengeance, a vice locking your mind into obedience. ”と続きます。
イリシッドの精神に集中する選択をした場合のナレーションなのですが、まずイリシッドの心を探るため「融合」します。次に「失われたものを欲している」というのは、あとの状況も鑑みるにイリシッドが養分、つまり脳を欲していることだと思われます。
でもそのあとに”but”と逆説で文章が繋がるんですね。その先は「復讐の爪が襲いかかる」(執念深く爪を突き立てて…)ですね。イリシッドがこちらを再び支配しようとする描写です。
こちらがイリシッドの「飢え」を探知するくだりまでは主人公が能動的にアクセスしている描写で、そこから転換して精神がイリシッドに捕らわれそうになる描写という風に移り変わっているるのは日本語字幕でも明らかです。
イリシッドの描写に、こちらを支配しようという動きと、食欲という目的が露出している状態というのが二重に描かれていて、おそらくこのイリシッドが弱っているために本来気取られないよう秘匿すべき、あるいはそんなことがどうでも良くなるくらい強く支配すべき状況であるのに、それができなくなっているため、このイリシッドの精神支配と根底にある捕食への欲求が互い違いに垣間見えるという描写をおそらくしているんだと思います。
この一連の流れだけでも支配が強まったり弱まったりという描写が連続していて、おそらくイリシッドが本来の力を持っていれば、捕食への欲求を満たす。つまり主人公に頭を差し出させるという動作を、同情や愛情という感情で塗りつぶして何の疑問を抱くこともなく実行させることができたのではないでしょうか。しかし瀕死の状態であるこのイリシッドは、どちらかに集中するとどちらかのコントロールができなくなってしまって、主人公が抵抗する隙が生まれていた。という描写なのではないかと考えています。総じて、イリシッドの精神支配とはどのようなものかを詳細に見せる役割がこのシーンにあったのではと考えています。
最後のイリシッドとの対峙に関する部分なんですが、おそらくイリシッドの精神支配というものを本気で受けた場合、もっと主人公の意識は混乱して曖昧な描写になるのではないかと思うんですね。ここでそれを詳細に描写して分析的にしてしまうと、支配されて不条理なことや非合理的なことという判別がつかなくなっている精神状態という印象が損なわれてしまうのではないかと思いました。それで、不完全な精神支配というシーンを作ることで、イリシッドによる精神支配がどのようなものかというのを自然な形で詳細にみせることができる。
いわば壊れた機械を描写することで中の配線の複雑さを映すことができる。というような意味で、こういうシーンがあったのではないかなと勝手に思っています。これはもう個人の感想の世界ですが。こういう、とても味わい深いシーンだったんじゃないかと、勝手に考えています。
余談ですが、ヴァンパイアとスポーンについて調べているときに、スポーン対して対義語的に「フル・ヴァンパイア」という言い回しをする例がありました。
一般会員とプレミアム会員みたいな印象を受けますね。
お読みいただきありがとうございました。
アスタリオン セリフ全文
“Hurry! I've got one of those brain things cornered. There, in the grass. You can kill it, can't you? Like you killed the others?”
「急げ。あの脳みそやろうを一匹追い詰めた。そこの草むらだ。殺せるだろ?他のやつを殺したみたいに」→断る
“I was hoping for a kind soul. Well, not to worry.”
「親切を期待してたんだがな。まあ、心配は無用だ」
“I saw you on the ship, strutting about whilst I was trapped in that pot.”
「船でお前を見たぞ。俺はあのポッドに閉じ込められていたが、お前は歩き回っていたな」
“What did you and those tentacle freaks do to me?”
「あの触手の連中と一緒になって俺に何をした」
“I'm not an idiot. I saw... Ahhh!!”
「馬鹿にするな。俺は見たんだ」
“What was that? What's going on?”
「今のはなんだ。どうなってる」
“The worm, of course. That explains things, somewhat. And to think, I was ready to decorate the ground with your innards. Apologies.”
「ああ、あの虫だろうさ。それで説明がつかないこともない。もう少しでお前の内蔵をぶちまけてしまうところだった。すまない」→「お互いの事情はわかったようね」
“Indeed we are. Please, allow me to introduce myself. My name’s Astarion. I was in Baldur’s Gate when those beasts snatched me.”
「ああ。さあ、自己紹介をさせてくれ。俺の名はアスタリオン。バルダーズ・ゲートにいて、あの怪物どもにさらわれた」→「自己紹介する。同じくバルダーズ・ゲート出身だ」
ぶらぶらBG3 05
川辺には「切り裂かれた死体」がいくつも転がっています。墜落に巻き込まれたなら、焼死や轢死、圧死であるはずですね。周囲に転がっているインテレクト・ディヴァウラーの死体が物語っている通り、おそらく彼らはノーチロイドから這い出してきたインテレクト・ディヴァウラーたちに襲われて死んだのでしょう。

死体に混ざってシャドーハートが倒れていますので揺り起こします。この部分の会話は訳も自然です。強いて言うなら、作中で一貫して使用される「治癒師」という日本語があまり直感的ではない程度でしょうか。英語では”healer”が使われており、支障はないですが、単に見慣れないのでヒーラーに置き換えて読んだ方が楽かもしれません。
シャドーハートは自分たちが生きていることに驚いています。彼女にもここがどこだかはわからないようで、幼生を解決できるヒーラーを見つけるため行動を共にしようという流れになります。レイゼルがいないことについて「私達のギスの友人はどうした」と言及すると「彼女を“友人”と呼ぶのは考え直したほうがいい。私たちを置いてどこかへ行ったようだし」と毒舌を聞かせてくれます。最後に、彼女を無視せず助けたことに礼を言われます。
周囲は死体だらけですが、切り裂かれた死体の他、「漁師の死体」や「さらわれた平民」という死体もあります。インテレクト・ディヴァウラーの死体も多くあり、漁師は彼らと戦ったようです。さらわれた市民というのは、我々と同じ被害者でしょう。
ここで最初の書籍が登場します。この書籍は「あばずれ女王の舟唄」です。
アンバーリー
あばずれ女王とは、海の女神アンバーリーの呼称です。こんな名前ですが蔑称というわけではありません。英語では”Bich Queen”と表記され彼女の信者たちも使うことのある呼び名です。これは気象や潮の流れなど、予測できないことが多くある海という場の性質を喩えた呼び名かと思われますが、ともかくレルムでは広く用いられます。
海の女神というと母性のようなものを強く描く場合が多くありますが、アンバーリーは気性が荒く狭量で貪欲、虚栄心が強いと言われています。邪悪な海の女神とはっきり書かれる例も存在します。明確に悪意を持ち、海の災害を自在に操り気まぐれに人を溺れさせるそうです。そうして自らの力を誇示することに喜びを感じているそうです。
自分に有益でないとなると、契約や約束を平気で破りますし、常に貢物を求めているそうです。サディストでもあり、船を破壊し難破船の生存者をサメに食わせたり、溺れる者を眺めて楽しむこともあるそうです。
そんなアンバーリーも人々に祝福を与えることがあります。ですがそれは、彼女に明確な利益がある場合に限られます。そんな恐ろしい女神ですが、船乗りたちからは広い信仰を集めています。それは基本的に畏怖によるものですが、なぜかそこまで恐ろしさを感じる描写はありません。むしろビッチクイーンの呼び名が表すように、船乗りたちはもはや彼女に親しみすら感じているようにも見えます。
アンバーリーの神殿に金銭や供物を収めにくる船乗りたちは、アンバーリーの性質をもはや受け入れており、それに関して暗い感情をみせるような描写は少なくとも本作ではほとんどありません。これは海を生活の基盤とするものにとって、アンバーリーがいかなるものであっても受け入れざるを得ず、海の苦難が日常となってしまっていることの表れなのかもしれません。
あばずれ女王の舟唄
アンバーリーについてお話したところで、拾った書籍「あばずれ女王の舟唄」を見ていきます。
まずタイトルですが、日本語では舟唄となっていますが英語原文では”Shanties”となっています。これは結構重要で、日本語の舟唄は文脈にもよりますが”Barcarolle”というイタリア由来の音楽を指すことが多いんですね。ですがここでは”Shanties”労働者の歌で、船歌という意味では特にたくさんの船員で運用する船などで歌われていたものを指します。
この書籍は小品が三作掲載されています。まず最初の歌を見ていきます。
「そして我らはみんな漕ぐ」この言葉がリフレインされるものです。英語原文では”And we all row!”となっており、この場合文頭の”And”は動作の連続、今までもしていた動作を繰り返すこと、を強調するニュアンスだと思われます。つまりこの詩の表現として、船に乗ってずっとオールを漕いでいる船員たちという様子が思い描けるものになっているのかと思います。
よって「さあ、みんな漕げ!」という掛け声のようなものではないでしょうか。
“With the spray upon our necks,”
「しぶきを首に浴び」
”And we all row! With the spray upon our backs”
「そして我らはみんな漕ぐ、しぶきを背に浴びて」
“And we all row! With the sea beneath our feet,”
「そして我らはみんな漕ぐ、海を足元に」
“And the Bitch Queen stays the storm.”
「あばずれ女王が嵐を引き留める」と作中の翻訳では書かれています。
「引き留める」という部分は”stays”に対応していると思われますが、止める、制止するのようなニュアンスですね。より詩的表現を強調して意訳するなら「鎮める」もあり得ると思います。
「ビッチ・クイーンが嵐を鎮めてくださる」というようなことかもしれません。
この最後の一節が特徴的で、先にもお話しました通りアンバーリーはむしろ嵐を引き起こす元凶のようにも思えますが、この歌では止めてくれると言っています。
自分たちがアンバーリーの恩寵を得られるという確信で船員たちを鼓舞するような意味があるか、あるいはアンバーリーの信徒たちによって書かれたのかもしれません。
アンバーリーの信徒と一口に言っても様々で、単に日常の中でアンバーリーを畏怖して捧げ物をしたり祈ったりする船乗りのほか、神殿に仕える「波の従僕」と呼ばれる神官たちがいます。
他二作にも見られるアンバーリーに対する強すぎるとも思える信仰心は、これらの詩がアンバーリーの神殿で書かれたのではないかとも思わせます。しかし”Shanties”というタイトルからも分かる通り労働者たちの歌ですから、もっと現場に寄り添ったもの。つまり船乗りたちの間で生まれた歌ではないかと個人的には考えています。
海の上といういわばアンバーリーの手のひらの上にいる状況で、声高に歌うものでしょうから、ある程度過度に持ち上げるような詩になっていても不思議ではないのかなとも思います。
この詩が歌われていた様子に関しても、少し妄想を膨らませたいと思います。
まず、おそらくこの歌4/4拍子だと思われます。詩全体が4/4拍子でかなり気持ちよく収まるんですね。ですがそれは、お前の歌い方だろうと言われたらその通りなので妄想とします。
ただ、シャンティというのは必要があって歌われていたという側面もあるんです。
船上の単純作業などの疲労を歌で紛らわしたり、連帯感の強調や士気を保つなどいろんな役割があったそうです。中でも典型的な例が、集団で作業をする場合に息を合わせるというもので、複数人でオールを漕ぐ場合も、リズムを合わせるために歌を歌うということがあったそうです。
この歌は明らかにオールを漕いでいる場面ですね。そのような場合、2拍子や4拍子がよく好まれたそうです。日本でも「イッチニー」という掛け声がよくありますよね。
そういう背景を考えると、この歌は4拍子で揃えられているように見えますし、リフレインも多く覚えやすい、さらに時折韻を踏んで覚えやすさを強調しているようにも見える。など実用性が高そうな歌に思えるんですね。これらの特徴から、4拍子で船乗りたちがみんなで歌える歌になっていたのではないかと考えています。
英語原文を見ながら口ずさんでみると体感しやすいと思います。
2作目を見ていきましょう。
“Wavemother, wavemother,” “Lash us to the prow.”
初めの一文ですが、作中では「波の母、波の母」となっています。「波の母よ」などの呼び掛けと思われます。次は「我らを船首に駆り立てよ」ですね。
“Wavemother, wavemother,” “We ask to sail your skirt if you allow.”
「足元を通らせてください、できることなら」ここですが、「足元」の部分が原文では”skirt”となっており、これは単に衣類のスカートを指す他、裾という意味もあります。ですが”skirt”を使う場合の裾は、山や地形の境界部分「山の裾野」などのニュアンスが強いそうです。
ここでは、船乗りたちがアンバーリーを畏れて海の本当に端でいいので通らせてくれませんか。というニュアンスかと思うので「裾」が選択されて足元と意訳されたのではないでしょうか。
ただ本来のニュアンスはもしかすると、ダブルミーニングかもしれません。これは詩歌ですから、大いに有り得ると思う可能性が、波の動きをスカートに喩えたのではないだろうか。というところです。アンバーリーを畏れ海という領域の端でいいから通らせてくれ。という意味の「裾」と、うねる波の動き、そしてアンバーリーの女性性を加味して衣類としてのスカートの比喩が重ねられているかもしれません。
“Wavemother, wavemother,” “Sink us if you will.”
「我々を沈めても構わない」沈めたければ沈めてくれというようなニュアンスですね。
“Wavemother, wavemother,” “Our skulls are yours with brine and sand to fill.”
「頭蓋骨はあなたのもの。塩水と砂で満たすがいい」
この歌は先ほどの一作目と比較して、全体を通してアンバーリーになら何をされてもいいというような印象を受けますね。沈められてもいいだとか、頭蓋骨を砂で満たすというのはつまり肉はもう腐ったり、海洋生物に食べられているということですよね。
これだけ見ると結構狂信的とも言えますし、逆にいうとそれくらい海の上での船乗りたちは、自分たちを無力に思うという感情が顕れているのかもしれません。
そこで一つ可能性としてあるのが”Lash”が「駆り立てる」ではなく「縛り付ける」という訳かもしれないというところですね。もう海に出たらアンバーリーの意のままだというような意図の”Lash”なのかもしれません。これはあくまで可能性です。
“Souls aweigh and anchors still!”
「魂を引き揚げ、錨を動かすな!」
“The wind won’t move without the Bitch Queen’s will!”
「風は動かない。あばずれ女王の命がなければ!」
“We’ll wait gladly, years and days”
「我らは喜んで待とう、何年でも、何日でも」
“Till the Bitch Queen brings the waves!”
「あばずれ女王が波をもたらすまで!」
“Hey! Ho!”
「ヘイ!ホ!」
“She told us so!”
「彼女の命だ!」
“Hey! Ho!”
「ヘイ!ホ!」
“She told us so!”
「彼女の命だ!」
大雑把に要約すると、アンバーリーの意思が動かなければ、航海はできないという内容ですね。
「魂を引き揚げ」とありますが”aweigh”というのは、錨を揚げるという様子を特に指す単語で、それを敢えて魂という主語に用いているのが興味深い比喩です。
錨は止まったままで揚がっていませんから、航海は始まっていません。一方、魂のほうは錨を揚げた状態です。これは肉体から離れやすい状態であるとか、動かしやすい状態になっていることを意味するかと思われます。アンバーリーに捧げるという意味かもしれませんし、単にいつでも海に出られるよう心の準備はしておけという意味かもしれません。
ただ後半で”Hey!Ho!”と労働の掛け声が挙がっている様子を鑑みるに、何かしら船出の準備は進められているのではないでしょうか。そう考えると、やはりいつでも出られるよう心の準備はしておけという意味かもしれませんね。
でもアンバーリーの命があるまで海には出られないから、いい風が吹いて、潮の流れが良くなるまで錨は動かせない、動かさないという解釈をしています。
今回はここまでにします。
お読みいただきありがとうございました。
※同じくこの付近で手に入る「いい香りの手紙」はティーフリングについて触れてから取り上げることにします。(原語名:Perfumed Letter)
ぶらぶらBG3 04
トランスポンダーまでまもなく、レイゼルとシャドーハートが時折口喧嘩するのを尻目に、ついにブリッジまでたどり着きます。そこではイリシッドと九層地獄の勢力が激しく戦っています。インプの他に、カンビオンの姿もあります。


カンビオン/フィーンド

カンビオンというのも、頻出する単語でかなり定義がややこしい言葉ですので触れておきます。
簡単に結論だけを申しますと、カンビオンとは悪魔と呼べる種族とヒューマノイドとの間に生まれた子供。ということになるのですが、もう少し詳しい情報を共有したいと思います。
そのためにまずフィーンドという言葉についてお話します。
フィーンドとは別の次元からやってきた存在の中でも特に”Fiendish planes”という分類の次元から来た存在を指す言葉だそうです。デヴィルの住処である九層地獄バートルや、デーモンの住処であるアビスという次元もこの”Fiendish planes”に含まれ、他にもいくつかの次元がこれに分類されます。総称なので”planes”と複数形ですね。フィーンドについては大丈夫でしょうか。それではカンビオンについて共有します。
カンビオンというのは、ヒューマノイドとフィーンドの間に生まれた子供の総称です。
つまりデーモンとヒューマンの間に生まれてもカンビオン、デヴィルとエルフの間に生まれてもカンビオンです。カンビオンというのはこれらの総称として使われる言葉のようです。
なのでただカンビオンというだけでは、デヴィル由来なのかデーモン由来なのか、はたまたその他のフィーンドとの間に生まれた子供なのかを、言葉の定義だけでみると判別しないようです。
ただ実体としては主にデヴィルとの間に生まれた者を指すことがほとんどだそうです。
一旦ここまで大丈夫でしょうか。もう少しつづけます。
実はこのカンビオンという言葉、元々はデヴィルではなくデーモンとの間に生まれた子供を指す言葉だったそうです。ただD&Dの版を重ねるうちにその定義が変化していき、現在ではあらゆるフィーンドと人型種族(ヒューマノイド)との間に生まれた子供全般を指すということで再定義されたという経緯がそうです。これと並立して、特定のフィーンドと人型種族の間に生まれた子供を、それぞれ親となったフィーンドごとに呼び分ける言葉も存在するんですね。
たとえばサキュバスとヒューマノイドの男性との間に生まれた場合、アル・フィーンドと特に呼ばれていたり、他にも組み合わせを特に指して呼ぶ言葉が存在するようです。
このような用法の中でのカンビオンは、主にデヴィルと人間との間に生まれた子供を指すようです。実際BG3に登場するカンビオンはほぼ全てデヴィルと人間との間の子供です。なので結局のところ、デヴィルとヒューマノイドのハーフという認識で概ね間違いないということになります。
かなり紆余曲折した情報でややこしかったと思いますが、大丈夫でしょうか。
ちなみに、もっとわかりやすくフィーンドとヒューマノイドのハーフというそのままの言葉、ハーフフィーンドという言葉も別途存在するようです。この言葉にはカンビオンも先程例示しましたアル・フィーンドも全て含まれます。ですが、BG3作中ではあまり頻繁には聞きません。
最後におさらいしておきます。カンビオンとは本来、あらゆるフィーンドと、ヒューマノイドとの間に生まれた子供全般を指す言葉ですが、ほとんどの場合はデヴィルとヒューマノイドの間に生まれた者を指すのに使われるということですね。
ブリッジでの戦闘中、ザルクというカンビオンの指揮官が登場します。指揮官ですから、この襲撃に参加している者たちは彼が率いていたということですね。ザルクは三つのセリフを発します。一つは以前紹介したもの「船を奪え、ザリエルに首をもがれるぞ!」ですね。
“Take this ship, or Zariel will have your head!”
もう一つは「侵入者どもの腹を開いてやれ、アヴェルヌスは我々のものだ」となっていますが、別に変な訳ではないですが英語原文では特に腹とは言っておらず、単に「引き裂いてやれ」と言っています。これは本当に些細なことです。
ただアヴェルヌスは我々のものという掛け声は気になりますね。もしかするとデヴィルたちは、ここのノーチロイドの目的が地獄への侵略にあると考えたのかもしれません。
この部分ですが、あとでもう少し補足します。
“Split these intruders open, for Avernus is ours!”
最後は「奴らの死体をステュクスに投げ込んでやれ」ですね。翻訳はごく普通です。
“Throw their corpses in the Styx!”
ステュクスというのは、ステュクス川という川の名前です。これは物質界の外にある川で、いくつもの次元を跨いで流れる大河です。複数の次元を繋いでいるのですが、特に特徴的なのはアヴェルヌスと、デーモンたちの故郷であるアビスがこのステュクスでつながっており、デーモンたちの侵入経路となったことですね。流血戦争が勃発したあと、彼らのすさまじい戦いによって大量の血が川に流れ込み、増水が起こったとも言われています。
ステュクスは忘却の川とも言われていて、ここの水を飲むと全ての記憶を失ってしまうそうです。
ちなみに、この川の名前は私達の住むこの次元においても、ギリシャ神話で登場します。死者の領域と生者の領域を隔てる川ですね。
レルムにおいても、ステュクスと死者というのは縁が深く「すべての川はステュクスに繋がる」という言い回しが作中でも登場します。あらゆる生命が死を迎えることの暗喩ではないでしょうか。ただ、私達の次元におけるステュクスとはやはり認識が異なっていて、神話的、神秘的な存在というよりは、本当に外の次元を繋いで流れる恐ろしい川という印象です。
さて少し話を戻します。「アヴェルヌスは我々のものだ」についてですね。
実は流血戦争を語る歴史の中に、次のような興味深い記述があります。それはイリシッドたちの帝国がこの世界を支配しようとしていたとき、起源もわからないほど延々と続いていたこの流血戦争が一時的に停戦したというものです。
デーモンもデヴィルもイリシッドの台頭には強い危機感を抱いたという経緯があるようです。ノーチロイドが現れたことに対して、デヴィルたちがこうも即座に臨戦態勢を取るというのには、こうした過去が関係しているのかもしれません。
ただイリシッドの帝国が力を増していた過去、デヴィルやデーモンたちが具体的にどのように立ち回っていたのかについては記述を発見できなかったので、推測できるのはここまでです。
ただそうなってくると、イリシッドはなぜアヴェルヌスに逃げ込んだのでしょうか。単に知らなかったでは説明しきれないと考えています。ここからは妄想となります。
個人的にはイリシッドにとって味方がいる次元は無いに等しく、同時にギスヤンキの他の拠点を悟らせないよう、単独で解決しなければならなかったからかと考えています。レッド・ドラゴンの部隊を撹乱するため、より大きな混乱を発生させられる次元を選んだのではないでしょうか。戦闘に巻き込まれるかたちで参加する主人公たちですが、激しい戦闘を生き残った一人のイリシッドが次のように言います。
「隷属者よ、トランスポンダーの神経を接続しろ。脱出せねばならない。急げ」
“To all, connect the nerves of the Transponder. We must escape. Now.”
英語原文では”To all”「全員に告ぐ」と言っており、厳密には隷属者という言葉は使っていませんが、状況的に意味は同じですね。命令を聞くものだと確信している言い回しです。

戦闘は終わり、アヴェルヌスを脱しましたが、ノーチロイドは墜落します。この光景を、別々の場所にいる複数の人物が目撃しています。様々な種族が登場し、短いシーンながら非常に情報量の多い画面です。種族についての説明はそれぞれが登場する場面でしっかり行いたいと思いますので少しお待ち下さい。また、このシーンそのものについてもお話したいことが多くあるのですが、読解のために必要な前提情報が多すぎるため、情報が出揃った時に改めてこのシーンを振り返ることにします。

どこかの水辺に落下した主人公ですが、謎の力によって地面に激突する寸前で止まり、一命を取り留めます。すでに長々とイントロでお話した後ですが、物語はここからが本番です。
夜は明け、朝になっています。
水に近づくと主人公は水が真水であることに気づきます。「近くに集落があるはず」という推測もされます。個人的にとても好きな場面で、まず真水であるのはここが海でなく川であるためですね。真水がある場所に人がいるという推測もこの世界の文化水準を端的に説明していてとても気持ちいいです。本作にはこういう手短で鋭いセリフが随所にあります。
チオンター川
ではここで今いる場所についてお話します。ここはチオンター川という川の近くですね。西ハートランズと呼ばれる地域を広く流れる川で、特に言及されるのはこの川が二つの都市を結んで流れていることです。一つはエルタレル。そしてもう一つがバルダーズ・ゲートです。それぞれの都市についての詳しい言及はここでは割愛します。
冒険は基本的にこの川の流れに沿ってバルダーズ・ゲートに向かうことを目的としています。本作で頻繁に聞くであろう[Down by the River]という歌も、おそらくチオンター川を下流に向かって旅する本作の全体像に則したものではないでしょうか。
せっかくですので、最後に[Down By the River]の歌詞を簡単に翻訳しておきます。詩的な解釈は人ぞれぞれですし、歌詞の翻訳は極めて高度なもので素人には困難ですので、あくまで簡易なものです。
Lace your heart with mine (心を繋ぎあわせて)
Let your sleeping soul take flight(眠れる魂を解き放ち)
Take me through the night(夜を超え、私を導いて)
Down, down, down by the river (下る、下る、川辺のほとりを)
Down, down, down by the river
Hanging moon in fog(霧に浮かぶ月)
Mists will lead where you belong(かすみは君をあるべき場所へ導くだろう)
Sweep me off my feet(私の心を奪って)(慣用表現:心を奪う、恋に落ちる、感激、圧倒)
Down, down, down by the river
Down, down, down by the river
Down, down, down by the river
Inky embers Swirl and dance(黒い燃えさしが渦を巻いて踊る)
Just leap the flames and take a chance(炎を飛び越え、チャンスを掴んで)
To be with me tonight(今夜私といるために)
Take my hand And hold it tight(手を取って、固く握って)
'Cause you and I are everywhere(だってあなたと私はどこにでもいるのだから)
The night is young, we're going(夜はこれから、私達は進んでいく)
Down, down, down by the river
Down, down, down by the river
Down, down, down by the river
Don’t wake me up.just leave me there dreaming(起こさないで、そのまま夢を見させて)
個人的には、夢の使者についての歌ではないかと考えています。
まだ動画ではお話していない存在ですが、主人公の夢を介して現れる本作の重要人物です。
「黒い燃えさし」や「炎を飛び越え」など、ロマンティックにも感じる歌詞の全体像の中に不穏な描写が度々見られる他、終始眠りや夜というモチーフが一貫しています。また、導くものとして描かれているのが、光などのわかりやすくポジティブなモチーフでなく、”Mists”つまり霧やかすみなのも意味深ですね。霧というと不安であったり、迷いなどを表すのに頻繁に用いられるモチーフですが、それが導くというのがかなり意味深に感じます。
“Down”というのも「下る」と訳し ましたが「潜る」という表現である可能性もあります。
最後には「起こさないで、そのまま夢を見させて」という終わり方ですが、これも夢の使者との時間と、そこへの依存を感じさせるようにも思えます。
また「どこにでもいる」という表現も、起きている時間に会うのなら、特定の場所を指定して逢引しないといけません。けれど、夢での邂逅を言っているのなら、どこにでもと言えなくないですよね。どこにいたって眠ってさえしまえば会えるのですから。
もしかすると、所謂王道のエンディングを描いていない歌詞かもしれません。
これは本当に書き込みを見かけた程度の情報源でしかないのですが、BG3は当初夢の使者ではなく、デイジーという夢の世界でのみ会える女性のキャラクターを設定していたそうです。
この人物を前提に描かれた歌詞なのではないかと考えることも多いみたいですね。
ただ歌詞の解釈に関しては私個人の感想の領域を脱しないので、ご自身で感じられたものが全てだと思います。こちらの解釈については是非とも聞き流していただければと思います。
ぶらぶらBG3 03
前回に続き、ノーチロイド船内を捜索して女性を助け出す手段を探すことになります。その過程で船内の様々な設備や装置に触れることができます。
これらの装置がイリシッドの文化を感じさせる描写になっているので、触れていきます。
捕らわれた女性は近くの装置を指し示して、イリシッドがそれに何かしていたと言います。言われた通りコンソールに触れますが、扱い方がわからないばかりか、他と違い触れてもなんの反応も示しません。些細なことですが、ここまでの探索の中で昇降機であったり、医療機器のようなものなど、実はイリシッドのテクノロジーにはいくつか触れています。
それらは、触れるだけで起動しましたし動作させることもできました。ここだけ突然セキュリティのようなものを求められます。結論から言うと単にある種の鍵がかかっているだけなのですが、その違いも含めて推測を進めていきます。
イリシッドのテクノロジーは彼らだけでなく他種族でも扱えるように作られている。そのような描写が複数見受けられる点が興味深いと考えています。
イントロムービーではイリシッドが遠隔操作していた養殖器も、それの小型版のようなものに物語の後半で触れることがあります。こちらは特になんの手続きもなく箱として開閉可能です。
ノーチロイドの操作もムービーでは全てサイオニックによる遠隔操作でしたが、後に同じ場所にいくと、コンソールのようなものが別途設備されているのがわかります。
イリシッドが形成する社会では、平均してイリシッド一人に対して少なくとも一人以上の奴隷がいるとされており、例えばオーリンドールと呼ばれるあるイリシッドの都市では、この物語のおよそ120年前、この世界の暦である「デイル暦」の1372年時点で人口が2,4000人弱。そのうちイリシッドは4300人ほどだったそうです。イリシッドの5倍近くの奴隷がいたことがわかります。このような人口の構成は、彼らが形成するコロニーにおいては決して珍しいことではなかったそうです。
念の為の注釈ですが、帝国が滅びたのは遥か大昔のことで、120年前といっても帝国崩壊からみればずっと後のことです。イリシッドの現状を語る上では問題ない例示と考えています。
イリシッドにもそれ以外の種族にも扱えるよう、ノーチロイド内の各種設備が配慮されているのは、奴隷という存在が前提となっているためだと思われます。
ノーチロイド自体が、帝国全盛期の船ですから、当時の設備であると考えるなら余計に奴隷の存在が前提となっているのだと思われます。
船の中には何人も隷属者の死体があります。単にこの騒動での脱走者というのもいると思いますが、おそらく船員として働かされていた者もいたからだと思われます。イリシッドではない隷属者たちは、我々自身もそうですが例え幼生を宿していても自在にサイオニック・パワーを扱えるわけではありません。なので船内作業をする場面があるとしたら、これらの装置で操作していたと考えています。
昇降機や回復装置、各種コンソールなど、主人公が触れるだけで扱えた装置は、共通して全て外向きに触手が生えています。これらのうち昇降機には「心と素早く簡単に繋がる」という説明があり、操作するにあたって精神的な繋がりが必要であることを示唆しています。
おそらく、サイオニックを検知して動作する仕組みではないかと思われます。
主人公の場合、アスがすぐ反応したように、サイオニックを扱うものにとっては頭にいる幼生が簡単に見つけられ、アクセスできる存在だとわかります。
では幼生を持っていない隷属者には操作できないかというと、そうでもないと考えられます。ギスヤンキは明確にサイオニックを使った技術や技をもっていますし、物語の中盤に出てくるある種族は、幼生が入っていないにもかかわらず、かつてイリシッドに奴隷化されていた名残で幼生が反応したりする描写があります。
このように、イリシッドに奴隷化された種族はすくなからずサイオニックを扱えたり反応するという特徴があります。
船内の機器を扱う認証手段の一つとして、サイオニックの反応を利用していたとすると、触れるだけで操作できる利便性と高いセキュリティを併せ持つかなりよくできたものに思えます。
触れるだけで扱えた機器については、もしかするとこの触手部分が使用者に反応して、サイオニックによる指示を伝達する役割があるのかもしれませんが、これ以上は妄想の色が濃くなりすぎてしまうのでこのあたりにしておきます。
養殖器についてはそのような触手はありませんが、先にも申し上げた通り別の場面で登場する同型の容器が普通に開けられるので、特に凝った仕掛けがないだけだと思われます。
昇降機にあると言いました説明についてですが「通り過ぎた者の心と素早く簡単につながることができる」とあります。「通り過ぎた」というのは明らかに直感的ではない日本語です。この翻訳文は原文を見つけられなかったのですが、おそらく装置に近づいたり、接触したというニュアンスで”pass it by”のような形で”pass”が使われていたのではないかと推測しています。
なんにせよ装置側がこちらと精神的な接触をする機能をもっているということだけは確かです。
今目の前にある使用できない装置をどうにかするため、船内を少し探索することになります。
同じ部屋にあと二人、寝かされた状態で意識を失った者がいるのですが、こちらも装置とは別の意味で重要なので触れておきます。「生贄にされたカルト教団員」とあり、意識はありませんが生きてはいるようです。当然、会話はできません。
アブソリュート教団
二人共髑髏が描かれたペンダントをつけているのですが、これはアブソリュート教団と呼ばれる宗教団体の入信者たちです。アブソリュート、「絶対」という意味の女神を信仰しています。
幼生を宿した者が多く含まれる団体で、そのほとんどは自らが寄生されていることを自覚していません。人格にも影響があり、アブソリュートと彼ら自身が呼んでいる未知の女神から受ける「啓示」に従い、どんなことでもする狂信者たちとなっています。啓示というのは、無論エルダー・ブレインをはじめとしたイリシッドからの指示ですね。
全くの別人になっているというわけではなく、根本的な性格や人格は多くの場合残っています。ただ価値観が大きく代わり、アブソリュートからの指示をすべてに優先していたり、それを至上の目的であると考えるようになっているのが特徴です。
今作の主要な組織の一つで、物語の根幹を成す存在です。そのため、後はこれから物語を進めながら情報を共有していくのがよいかと思いますので、今は概要に止めます。
生贄にされたとありますが、生贄とはどういうことでしょうか。新たなイリシッドとなるための宿主という意味であれば、変成が近いためにこうなっているのかもしれません。基本的にイリシッドへの変成は、二段階に別れているそうです。
まず寄生した幼生が脳を食いはじめ、やがて全て食い尽くされます。次に一週間にわたって体が変化していき、やがて完全なイリシッドになるそうです。資料ではこう書かれていますが、作中ではもっと一瞬で変化するような様子が度々描かれます。それにはBG3での特殊な状況と理由がありますが、ここでは割愛します。
彼らは死んでいるわけではありませんが、動けなくはなっています。一応サイオニックによる指示には従うようで、近くにあるコンソールで三種類の指示を出すことができます。
判定に成功することで三種類のボタンによる指示を読むことができ、「解放」「攻撃」「処分」となっています。「処分」は文字通り死を意味します。その際彼らの頭から強いサイオニックの光が発せられます。「攻撃」では彼らが立ち上がり、敵対します。最後は「解放」なのですが、これを押すとサイオニックのエネルギーが捕虜から放たれますが、起き上がることはありません。
肉体は生きているため、サイオニックによる操り人形にすることはできるのでしょうけれど、本人たちの意思で起き上がることはできないということだと考えられます。
イリシッドの主食はヒューマノイドの脳なので、食用という意味での生贄かもしれません。もしくはインテレクト・ディヴァウラーを生産するためというのも考えられます。
ちなみに「解放」は”Unleash”です。束縛からの解放や制限や抑圧を解放するニュアンスですね。
今調べた装置は文字を読む分には魔法学による判定が必要ですが、操作するのには一切必要ありません。これも、触れるだけで起動できるタイプのものです。
文字の判別に魔法学の能力が必要なのは、おそらく”Qalith”で記載されているためと思われます。これはイリシッドでないかぎり魔法を使わずには読めない文字というもので、彼らが常用する文字です。書かれていることだけでなく、書き手の思考までもを残すことができる文字で、今まで触れてきたルーンの石板も似た性質がありますね。
あちらは判定が不要なので、もしかすると隷属者にも読めるよう情報を出力しやすく処理されているのかもしれません。これは明言されている根拠のない妄想です。
探索を続けます。隣接した空間に特徴的な設備があります。
ノーチロイドに格納されている大量のポッドにアクセスできるようで、中でもある一つのポッドとその周囲を囲むように配置された椅子が特徴的です。
この椅子に座ると、主人公は「声が聞こえる」とつぶやきます。どうも椅子を介して集合意識と繋がっているようです。椅子に囲まれた中央のポッドには女性が一人入っており、意識を失っています。近くのコンソールを操作すると、この女性は一瞬でイリシッドへと変成してしまいます。
寄生後、十分な期間が経過した者をイリシッドへと変成させるための設備なのかもしれません。
周囲を囲う椅子には儀式的な雰囲気があります。新たにイリシッドとなった者を迎える場所なのでしょうか。これは見た目からの推測に過ぎませんので、強い根拠はありません。
椅子に座ると声が聞こえるということから、これがただの椅子でなく集合意識との接続、またはそれを強化する機能があることがわかります。はじめは変成を指示する意味があるかとも思いましたが、だとすると別途装置がある意味が薄れますね。装置が保険的な役割である可能性もありますが、さすがにそれだけではないと思います。
ノーチロイドという前提を加味すると、コロニーから大きく離れて行動していることも十分ありえることですから、その状態においても自分たちのコロニーで形成されているハイヴマインドに接続できる、という機能なのかもしれません。これもかなり妄想的な推測です。
寄り道が長くなりましたが、先程のポッドを解錠するための鍵はここにあります。
隷属者の死体がそれを持っており、アイテム名は「妖しのルーン」英語原文では”Eldritch Rune”となっており、”Eldritch”とは不気味あるいは神秘的なというニュアンスですね。
これを使うことで、コンソールと自分の中の幼生がサイオニックでつながるようになり、装置を作動させることができます。
「隷属者の死体」なのですが、よく見るとペンダントをつけているのがわかります。このペンダントが先程気を失っていた二人と同じものであり、この人物が教団員であったことがわかります。石板を使ってなにかの作業をしている最中に命を落としたようです。周囲に広く血が広がっていることから、外傷が死因である可能性は高そうですね。
この部屋でなにかをしようとした最中に、デヴィルによって殺されたのかもしれません。エルドリッチ・ルーンの方は、認証キーのような役割 ではないでしょうか。
コンソール自体の作りは他と変わらないのですが、この装置だけがルーンを必要とする上、いざ使用しようとすると幼生を経由したサイオニックによって、装置を屈服させなければならないという手続きがあります。いわば二重にセキュリティがかけられているわけです。
このルーンがあったとしても使用者を選ぶということですから、死んでいた女性もイリシッドにとってそれなりに信頼のおける奴隷だったのでしょう。
あるいは単に戦闘や衝撃によって欠損した可能性も考えましたが、コンソールが破損したりしている様子はありません。そもそも取り外しが可能だったと考えるのが自然かと思います。
ちなみに、魔法に高い専門性をもったクラスであれば、複数回の判定に成功することで、ルーン、つまり魔力がある文字によって保護されていると知ることができ、同様の文字を魔法で刻むことで即座に動作させることもできます。”Qalith”を応用して作られたセキュリティなのかもしれません。妖しのルーンの説明欄には、初めて見たはずなのに、大きな機械の部品であることがわかるとあります。日本語では「気もする」と曖昧ですが、英語原文では”You are sure”となっており、ニュアンス的にはかなり確信的です。
(原文“You are sure you’ve never seen any of the like, yet part of you recognizes it as a component of some bigger machine.”)
こういった情報を感覚的に理解できるのも”Qalith”の特徴と共通するものがあります。”Qalith”自体の資料には特に文字自体に力があるようなことは書かれていませんので、まず文字による認証。つまりパスワードの入力というプロセスを経て、次に生体認証という二段階のセキュリティを通過して初めて操作できるのかもしれません。魔法学の判定でルーンを刻んだ場合においても、最終的にはサイオニックによって装置を従えなければならず、開けるまでのプロセスに大きな違いがないこともあってこのように解釈しています。
もうおわかりの通り、このポッドだけかなり厳重です。捕虜のポッドを開閉するためのものですから、鍵と認証が必要であること自体にはさほど疑問はありませんが、我々が幽閉されていた場所にこのような装置はありませんでした。そのためかは不明ですが、現在の騒動という外的要因によって今脱出できています。このポッドは万が一の状況と言える今も開いていません。
なにはともあれ、ポッドの中の女性を助けます。女性の名前はシャドーハート。共に旅をする仲間の一人です。彼女は手短に礼をいうとすぐにレイゼルに向かって顔をしかめ「危険な仲間を連れているようね」と嫌味を言います。
ギスヤンキが他の種族からどういう印象を持たれているかがすぐにわかるシーンです。そんなことよりもレイゼルはこの救出劇全体に苛立っているのですが、この場は急いだほうがいいということで、三人は協力してノーチロイドからの脱出を目指すことになります。
この二人のいがみ合いは冒険全体を通して続きます。コメディタッチなものが殆どですが、なかにはシリアスな展開も用意されており、本作の見どころの一つですね。
さあ脱出を急ごうという場面で、シャドーハートは少し待ってといってなにか小さな物体をポッドから取り出します。それを見つけて安心した様子で懐にしまい込みます。なにかと聞いても気にしないでと言われ、この場面では言及することができません。
これについてはBG3の最重要項目の一つで、このポッドだけが厳重なセキュリティで守られていたのもこれの存在が関係しているのではと考えています。
ただそれを説明するには、物語全体を見通す必要があるため今は割愛します。
一旦今回の記事はここまでとします。
やや説明が冗長になってしまう部分もあったかと思いますが、ご容赦ください。
ありがとうございました。

ぶらぶらBG3 02
ノーチロイド船内
前回に続いて、ノーチロイドからの脱出を続けつつ、船内の様子を見ていきたいと思います。

レイゼル
船内を歩く主人公をレイゼルは背後から観察し、奇襲します。「怪物め」と呼び、迷いなく剣を向けてきます。
しかしすぐにお互いの意識に変化がおき、戦闘には至りません。レイゼルには主人公、主人公にはレイゼルの思考が走馬灯のように駆け巡ります。
「隷属者ではないのか」とレイゼルは言います。隷属者。これはイリシッドにより奴隷化された者に対する蔑称です。
怪物、と呼ばれたのは寄生された者は一定期間後にイリシッドへと変化してしまう、いわばイリシッド予備軍であること。また、幼生を介してイリシッドが意識に干渉できるようになり、自由意志を失って行動することがあるからです。
普段は異常なく見えても、イリシッドのテレパシーで指示を受けるとそれに逆らえなくなるのです。レイゼルは主人公も自由意志を失った隷属者だと思っていたのですが、思考を共有したことでそうでないことがわかります。
「一緒に切り抜けられるかもしれない」
レイゼルは行動を共にすることを望みます。
ちなみに奴隷となっているからといって、必ず幼生が寄生しているわけではありません。寄生意外にもサイオニックによる精神支配で、他者を奴隷にする例も少なくないそうです。
寄生されるということ
イリシッドは強力な精神魔法を使いますが、幼生も例外ではありません。宿主の脳に寄生した幼生は、イリシッドからのテレパシーだけでなく、近くにいる幼生同士も思考を通わせることがあります。それは自己防衛的な働きであったり、より強力な精神干渉に強制されて発生する他、共存している限り任意で利用することもできます。ただし、先述の通りイリシッドからの指示を受けると宿主を操ろうとしますから、基本的には最悪の事態です。イメージとしては我の強いBluetoothだと思ってください。
作中では宿主が意図したり、イリシッドの強制力が働いていた部分以外でも、幼生を持つもの同士が近づくと必ず反応しますので、一旦すべてに反応するようです。やっぱりBluetoothですね。
もう一つ、最初にアスと遭遇した時に「我々を自由にするために来てくれた」と彼はこちらを味方であるばかりか、自分に都合のいい存在に違いないと判断しています。これはアスが主人公を隷属者であると考えていることの証左でしょう。つまり、幼生の存在を感知したもののほとんどは、その者がイリシッドの隷属者であると考える傾向にあります。
物語全体として結構見えにくいのですが、幼生に寄生されて変性していないもの自体は結構いるんです。ではなく、変性もしていなければ、イリシッドに操られてさえいない者というところで、主人公たち一行は特殊な立場にあります。これにも理由がありますが、ここでは割愛します。
ギスヤンキ
前回も少し触れましたが、ギスヤンキというのは種族名ですね。なので、今目の前にいるのは、ギスヤンキの戦士レイゼルということになります。
彼らはイリシッドと明確に敵対する代表的な種族で、はるか昔にイリシッドの奴隷であったという過去があります。彼らの敵対はその歴史が背景にあります。
非常にプライドが高い種族で、排他的であり同族以外を根本的に信用していません。高い戦闘能力と好戦的な性格で知られる種族で、彼らの社会は非常に厳格な縦構造になっています。
ギスヤンキという名称は、彼らがイリシッドへの反乱を始めたきっかけでもある「ギス」という一人の女声の名に由来します。
ギスは奴隷たちを率いてイリシッドに抵抗しそれを成功させただけでなく、地獄にいる竜の神ティアマトと契約を結び、レッド・ドラゴンを味方につけています。
レッド・ドラゴンとギスヤンキの契約には、この物語に大きく関わる秘密があるのですが、今は割愛します。
レイゼルと精神が繋がった際、レッド・ドラゴンの他に、銀の剣という幻視をします。レッド・ドラゴン、銀の剣というのは双方共に位の高いギスヤンキにのみ使うことを許されるものという点で共通しています。ただし、この時点でレイゼルが所持していたり、使用を許されているものではありません。これらはレイゼルが見た景色に過ぎず、彼女がそれを日々強く意識していること。つまり憧れの現れです。
ちなみにレイゼルの初期クラスはファイター。攻撃力が高く、近接戦闘を得意とするクラスです。これはギスヤンキという種族の特性をあらわしたものでしょう。彼らは非常に攻撃的な性格かつ身体能力が高く、ギスヤンキに生まれたものたちはすべからく優秀な戦士です。
加えて、ギスヤンキは訓練の中で殺人が発生することも厭わないほど、弱いものは淘汰されて然るべきという明確な弱肉強食思想を持っています。ですから、成人して戦士となるギスヤンキはほとんどが命懸けの訓練を乗り越えた者たちであり、故に過激で優秀なのです。
共に行動することになったレイゼルは治療法に心当たりがあるようですが、とにかく物質界についてからだといって主人公を急かします。
「まずインプどもを片付ける。それから舵を見つけて船の制御を奪う」
舵は”helm”が使われています。これは船の操縦系、舵輪などを広義に含む言葉で、この場合目的地はトランスポンダーなのですが、舵と言われるとピンとこない場合もあるかもしれません。
ここでレイゼルと協力し、トランスポンダーを掌握、アヴェルヌスを脱出し、物質界に戻る。ということで、目的が具体化されます。
ところで、ノーチロイドが現在アヴェルヌスにいることについてですが、これは意図されたものなのか、事故なのか、というところも少し考えておきます。
推測ですが、アヴェルヌスに来た事自体は意図的であると考えられます。
まず、ムービーシーンで爆発によってトランスポンダーが発動していますが、この時点でトランスポンダー自体は接続されています。
次に、アスがセリフで「我々は逃げ込んだ」と能動的なニュアンスの言葉を使っています。アスはずっと集合意識に繋がっていたはずですから、この言葉は信憑性が高いと考えられます。
ここにこうも長く留まるつもりはなかったかもしれませんが、アヴェルヌスを経由しようという考え自体は意図されていたのではないかと思います。
デヴィルたちの襲撃と混乱を利用して、ギスヤンキを撒こうとしたのかもしれません。
レイゼルとの同行は初めての戦闘から始まります。
インプ
イリシッドやそうでないものを、インプたちが見境なく殺し貪っています。これはインプが低脳で知性が低いために目につくものを何でもかんでも襲っている、というわけではないと考えています。ここに居るものは隷属者、つまり誰もがイリシッドに変成する可能性があるためで、この船に乗っているものは見た目関係なく全てイリシッドであると言っても過言ではありません。そして彼らデヴィルの目的がノーチロイドの鹵獲にあるため、トランスポンダーを起動できる可能性のあるものはすべて殺す必要があるんですね。つまり殲滅作戦を出されているので、それに則って皆殺しにしている。と考えています。
推測の根拠はといいますと、少しあとで登場する人物のセリフに「船を奪えなければザリエルに首をもがれるぞと」というものがあります。これは戦闘中に発せられるもので、会話シーンではありません。船を奪えなければ、というところで、破壊ではなく鹵獲が目的であるとわかります。また、アヴェルヌスの支配者であるアーチ・デヴィル、ザリエルから彼らに指示が出ていることもわかります。
もう一点、D&Dの設定におけるインプは「悪意ある助言と策略を以って人を堕落させたり、主人や主人が悪の道に引き込みたいと思っている者を助けるデヴィル」ということになっています。
決して知能が低い種族というわけではないんですね。むしろ狡猾、ずる賢い種族と言えます。本能のままに暴れるというタイプでもなさそうです。今目の前で彼らは歩兵のように扱われていますが、本来は臆病な性格で、すすんで自ら戦う種族でもないそうです。
彼らをそうさせているのは、今ここがアヴェルヌスであって、彼ら自身が群れて強気になっているからかもしれませんが、むしろ彼らをそうさせるより恐ろしい権威とそこからの命令という背景、つまりザリエルの命令であるからかもしれません。
ムービーシーンでもインプたちは群れで一斉に襲いかかっていて、ある意味統率の取れた動きをしていました。おそらくノーチロイドを奪えと指示を出しているザリエルの影がちらついているという描写なのかもしれません。
インプたちを襲撃して切り抜け、トランスポンダーを探して移動します。途中、捕虜のポッドを内側から叩きながら「助けて」と叫んでいる女性を発見します。主人公はポッドを開ける方法を探しますが、接合部分の仕組みが理解できず開錠できません。
レイゼルは「望みのない者に構っている暇はない」と急かしますが、中の女性は「何か方法があるはず」と懇願します。
ここからノーチロイド船内を捜索して、女性を助け出す手段を探すことになるのですが、その過程で船内の様々な設備や装置に触れることができます。
これらの装置がイリシッドの文化を感じさせる描写になっているので、次回はそれらについて触れていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。
ぶらぶらBG3 01
イントロ
はじめましてかたにくと申します。BG3の「読解」という主旨のブログを書いています。
BG3の細かい設定や、日本語と英語の差異などに目を通しながら、物語をもう一度味わおうという主旨のブログです。
私が調べたり再翻訳した情報を共有し、皆さまのロールプレイに役立てれば幸いです。
用語を調べるにあたって:主に[Forgotten Realms Wiki]およびその他D&D系ファンサイトなどから情報を引用しています。
ゲーム内テキスト英語原文:[BG3 wiki]から引用しています。
英語翻訳に関しては独学および、アメリカに住んでいる家族に協力していただきました。
(Thank you for Sota.)
至らない点もあると思いますが、ご容赦ください。
注意点
・あくまで個人が翻訳または意訳したものです。正確性を保証する内容ではありません。
・ブログの中でたまに、推測や場合によっては妄想に近い領域にまで踏み込んで解釈を試みることがあります。その際には必ず推測、妄想であることをお伝えしますので、その部分は参考までにお聞きください。
・ブログの目線についてですが、まったくBG3をやったことがない人にもわかる内容にしようと考えています。なので、プレイ済みの方にとっては多少まどろっこしい説明があるかもしれませんがご了承ください。
ではさっそく、主人公がノーチロイドで目を覚ます最初のシーンから見ていきましょう。
ルーンの石板1
船からの脱出が始まって最初に読めるテキストです。
「幻視が精神に投影される。ノーチロイドが次元を疾走し、サイオニックの力で輝いている」
ここはそんなに突飛な訳はされていません。幻視が精神に投影される。石板に触れると、心にその映像や情報が直接入ってくる。というような描写で、このイリシッドの石板がどのようにして情報を媒介しているのかという説明になっています。
ルーンの石板2
「ゴブリンのイメージだ、ゴブリンの習性や歴史があなたの心に流れ込んでくる」
こちらもごく普通の訳ですね。手術台のようなものに寝かされているゴブリンの死体と併せて、イリシッドがゴブリンについてなにかしらの研究をしていた、という状況を匂わせるものになっています。
ルーンの石板3
「ノーチロイドの構造が頭に入る。神経、腱、船として生きる」
このあたりから難しくなってきます。
私は初めてこれを読んだとき、「船として生きる」ということは、ヒューマノイドがノーチロイドに変成してしまうということかと思ってしまいました。ですが英語のナレーションではこう言っています。
“A schematic of an Nautiloid flashes into your mind. Nerves, sinews, as much living being as ship.”
私が混乱した「船として生きる」は”as much living being as ship”こちらを直訳すると”船であることと同じくらい生き物でもある”となり、少し意訳するなら「船であると同時に生き物でもある」が最も自然かと思います。
なので単にノーチロイドの構造を理解した時に、それが”nerves”神経や”sinews”腱(アキレス腱などの腱ですね)などの生体パーツでできていることを知った。そして、これがほとんど生き物とすら言える船であるとうことがわかった。ということですね。
ルーンの石板4
「感情が精神に伝わる。異常。我々のような存在。全体から切り離されている。注意せよ」
こちらは、訳がそれほど屈折しているわけではないのですが、原文がそもそも抽象的なために分かりづらくなっている例です。
“A feeling penetrates your mind. An anomaly, one like ourselves, unconnected from the whole. Caution.”
【“A feeling penetrates your mind”「ある感覚があなたの心に入り込む」】
“penetrates”は貫通するという意味の動詞です。ニュアンスとしては、有無を言わせず入ってきたという感覚かと思われます。
【“An anomaly, one like ourselves, unconnected from the whole.”】
“An anomaly”とは特異点、異常なもの。”one like ourselves”これは代名詞の”one”が私達に似ている。と言っていて、”one”が指すのは”An anomaly”かと思われます。さらに付加情報が続き”unconnected from the whole”「全体から切り離された」という情報が続いてます。
全文を総括すると…。
「ある感覚があなたの心に入り込む。特異点、我々に似ているが全体から切り離されている。気をつけろ」
というところでしょうか。「似ているが」と逆説的にしている根拠は、警告の内容が「特異点」と呼ばれる存在が我々に似ているのに「全体から切り離されている」というところにあるため、自然な日本語としてはやや逆説的に特徴を説明する方が読みやすいかと思われます。
全体と言うのは、イリシッドはエルダー・ブレインを中心としたいわゆるハイヴマインド、集合意識に繋がっている様を現しているものと思われます。
BG3を一度でもクリアした方ならば、この文書がある人物について言及しているように聞こえないでしょうか。結構重要な示唆が含まれた文章かと思われます。
ルーンの石板5
「目の前に世界を超えた世界が広がる。大構想による帝国。このような船によって横断される」
直感的ではない日本語ですが、逆に意味を想像しやすいと思われます。
“Worlds beyond Worlds”「世界のそのまた向こうの世界」というところでしょうか。とにかくこことは別の遠い世界という表現でしょう。”Empire of grand design”「大構想による帝国」つまりこれは未来の想像図であることを意味します。
大構想は滅んだ帝国の復活を目指して、イリシッドたちが共通の取り組みとしているものであり、それは成し遂げられていません。つまり、彼らの石板は誰かが思い描いた空想すらも共有可能であることがわかりますね。
最後の「このような船」はノーチロイドのことでしょう。”just like this”を直訳したものですね。今私達がいる船のようなもので「横断される」横断に対応する箇所は”traversed”が使われています。横断や航行を意味する単語です。ここは「これと同じような船が航行している」と読み替えてもいいかもしれません。
ここから少し妄想を膨らませると、以前お話した通りノーチロイドは現在かなり希少な存在ですから、それが当たり前のように飛んでいる未来という描写が、イリシッドたちの完全な復活を象徴しているものに思えますね。
探索中、船内で声を聞きます。「助けて!奴らが来る前に!」声の主は頭蓋骨を切除された死体です。インテレクト・ディバウラー、脳みそに四本足が生えたクリーチャーです。
インテレクト・ディヴァウラー 
イリシッドによって生み出される下僕で、その生産工程については今見ているままですね。イリシッドの儀式によって、彼らの奴隷などを使って生み出されます。
インテレクト・ディヴァウラーもまた、イリシッドの集合意識に組み込まれていることがこのシーンで示唆されています。彼らは自分たちを種族全体で一つの意識であるかのように考えています。しかし、助けを求めているのはこの個体にとっての個人的な状況です。
つまりどちらかというと、資料にもイリシッドの下僕やペットのような扱いとある通り、名前のついてない犬というように考えるのが自然かと思います。
群れという単位でアイデンティティを持っているものの、あくまで個体ごとの認知と意識があるようです。名前を尋ねると彼はアスと答えますが、これは”Us.We are us.”というセリフから来た呼称でしかなく、アスの答えとしては「我々は、我々だ」としか言っていません。
この場面でのアスとの会話で、我々もまた幼生を経由してサイオニックのテレパシーを利用できることが示唆されます。アスのセリフ
「我々はあるレルムに逃げ込んだ。アヴェルヌスと呼ばれるレルムだ」
このセリフですが、カタカナの「レルム」という部分は作中において世界や次元などを指す広い意味を持つ言葉です。厳密に次元という単位で話す時は”Plane”が使われることもある一方で、例えば「この世界」というのを「このレルム」と言い表すこともよくあります。
一応定義となる設定はありますが、文脈によってそれの指す範囲は様々です。かといってさほど難しく考える必要はないと思います。「世界」というふうに置き換えれば大抵成立します。
ただここでアスが使っている”Realm”は特にアヴェルヌスだけを指していますね。
ちなみに“Relm”というのは領域という意味の英単語です。
D&Dの世界全体を指す”Forgotten Realms”は「忘れ去られた領域」と訳せます。この名称は作品名に近いものですから、作中の人物たちが自分たちの世界をフォーゴトン・レルムということはありません。
最後に残り2つ手に入る石板についても見ておきましょう。
こちらは、さほど翻訳と原文とに大きな差はありません。
“Paint images of here in your mind: a brain, a githyanki warrior, and centuries of darkness.”
おぼろげなイメージがあなたの心に現れる。脳、ギスヤンキの戦士、暗黒時代。
作中の日本語では「おぼろげな」とありますが、おそらく”Paint images”という部分が鮮明ではないイメージというニュアンスで訳されたものと思われます。
またここでいう暗黒時代とは、イリシッドにとってのものと考えるのが自然かと思います。つまり、ギスヤンキの反乱による帝国崩壊以降ですね。イリシッドにとっての苦難の時代という意味かと思われます。
厳密に言うと、ギスヤンキの反乱は帝国崩壊という一連の流れにおける、きっかけの部分なんですね。そこから、他にも奴隷になっていた種族が抵抗の希望を持ち始め、ギスヤンキに続いて反乱を起こした。ということだそうです。
その後、イリシッドは散り散りになって地下世界に逃れていますが、このギスヤンキの反乱以降彼らに降り注いだ数々の苦難が、ここでいう「暗黒時代」に相当するものでしょう。
最後も翻訳と原文に大きな差はありません。
千年に及ぶ人型生物、すなわちエルフ、ドワーフ、ヒューマンなどの歴史があなたの目の奥へ閃光のように映し出される。
“A thousand years of humanoid history. Elves, dwarfs, humans, and more flash behind your eyes.”
これはほとんどそのままです。
強いて言及するなら、この映像は「閃光」という言葉が使われているとおり鮮明です。他の記録も鮮明に映し出される印象でした。ですが、先程のギスヤンキの記録についてはそうではありません。もしかすると戦いで負傷したものの記憶であったり、戦争のショックが映像を曖昧にしているのかもしれませんね。
もう少し踏み込むと、D&Dの資料においてもこの帝国崩壊は曖昧な記録というように扱われていて、イリシッドの起源も含め複数の説があるようにして扱われます。そのあたりが若干デリケートな可能性もありますね。
ちなみに、日本語のwikipediaでギスヤンキの項目を見ると、かなり詳細に帝国崩壊までの流れが書かれているのですが、英語圏のサイトなどでは同じ情報はなかったり、ある名詞が全く別の意味であったりと情報がかなり複雑です。
またD&Dは第4版で並行世界を扱っていたなどの経緯もあり、そちらの情報が混在しているケースもいくつか見られます。私の方では、ブログ冒頭の出典でお話した情報源のみに絞って、お話していますので、ご了承ください。
以上で終わります。
今後もBG3の各シーンから得られる情報、そこから読み取れるものをまとめて共有していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
最後になりますが、実はそんなにたくさんの方が読むブログだとは思っていなくて、今でもBG3を楽しんでいる方や、難しくてやめてしまったけどまだ気になっているという方がもしいれば、こちらで調べた情報を共有して、より世界に入り込めればという気持ちでやっていますので、目標としては10人の方に届けばいいなと思って続けていきます。
ブログの原文自体はBG3の最後まで準備はしていますので、ペースはまちまちかもしれませんが、お話の終わりまでやっていくつもりですので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
ぶらぶらBG3 00
イントロムービー
はじめましてかたにくと申します。BG3の「読解」という主旨のブログを始めて行こうと思います。「読解」と申しますのは以下の点です。
・固有名詞・設定が多い:複雑というわけではなく、単に60年近く続いているコンテンツですので、固有名詞や過去作での設定が多いという特徴があります。
そのせいで、唐突に出てくる固有名詞に混乱してしまうことが多々あります。でもこれらをよく調べながら進めると、キャラクターたちの会話やゲーム内テキストの情報が鮮明になり、ゲームが何倍も楽しくなります。なので私が調べた情報について、共有したいと思います。
・翻訳の壁:本作の特にCS版は英語原文をおそらく機械翻訳に通して日本語化したものとなっており、そのせいでかなり直感的ではない箇所が多くあります。場合によっては誤訳も存在します。
言語系MODも、今のところCS版には無いようです。なのでそれらを英語から再翻訳しながら、今一度読み直そうというところです。
これらの作業を通して再度BG3を一緒に読解しながら、物語をもう一度味わおうという主旨のブログとなります。
出典
用語を調べるにあたって:主に[Forgotten Realms Wiki]およびその他D&D系ファンサイトなどから情報を引用しています。
ゲーム内テキスト英語原文:[BG3 wiki]から引用しています。
英語翻訳に関しては独学および、アメリカに住んでいる家族に協力していただきました。
(Thank you for Sota.)
至らない点もあると思いますが、ご容赦ください。
今回のナンバリングを「00」としているのは、前提知識の共有という主旨が主となるからです。
では早速、イントロムービーから見ていきます。
設定のおさらい:イントロムービー
まず設定のおさらいです。イントロムービーで登場する様々な事物について、事前知識を確認しましょう。
イリシッド
イリシッドとは、かつて巨大な帝国を築き様々な種族を奴隷化しながらその勢力を増していった凶悪な種族です。タコのような頭が特徴的で、基本的に倒すべき敵として登場します。
物理的な戦闘能力は決して高くはありませんが、他者の精神に直接干渉する能力「サイオニック・パワー」の使い手であり、その能力からマインド・フレイヤー「精神を鞭打つ者」と呼ばれます。このあたりは有名ですね。
作中では「イリシッド」という言葉と「マインド・フレイヤー」という言葉が、特に規則性無く混在するケースがありますので、二つが同義であることを知っておくと便利です。
イリシッドの細かい設定よりも、まず重要なのがこの世界における現在の立ち位置です。彼らは今も恐れられている種族です。そうでありながら、敗北した種族でもあるという点が重要です。
先にも申し上げました通り、イリシッドは過去に巨大な帝国を築き、多くの種族を支配下におき奴隷化していました。ただし強力な帝国は奴隷の反乱によって現在は存在しておらず、イリシッドたちは地下深くに逃げ延びて散り散りになっています。
イリシッドはその過去と、種族としての能力においては世界中から恐れられていますが、現在は特に強い権威を振るえるような立場にはなく、隠れ潜んでいたということです。
彼らは常に帝国の復活を目論んでおり、そのためにある一連の計画を「大構想」と呼びます。
BG3全体を通して、この設定は深く関与してきます。
ノーチロイド

イリシッドが使う船で、次元を超えて世界中あらゆる場所に出現することができる船です。
構造物であると同時に生き物でもあり、いわゆる生体兵器というものです。注意すべき点は、あくまでもイリシッドによって作られるもので、こういう生き物がいるわけではありません。
見た目もふくめ生き物と言って過言ではない存在ですが、人工物ではあるということです。
このノーチロイド、実はかなり希少な存在で、帝国の崩壊と共にその製造方法が失われており、イリシッドたちにすらもう新造艦を建造することはできません。
次元
ノーチロイドが次元を渡るといいましたが、この世界は多重構造になっていて、世界がいくつも存在します。挙げだすときりがないほどいくつもの次元が存在しますので、それぞれについては適宜情報を付け足して行きます。
一例として、海があり陸があり街がありという、冒険の主な舞台である世界のことは、「物質界」と呼ばれます。次元ごとに全くルールが異なる世界が広がっており、今作では別次元に入るシーンはあまり多くはないものの、テキストなどでも多く登場するため、都度お話します。
設定のおさらいはこれくらいにして、ムービーを見ていきましょう。
冒頭。イリシッドが手を触れずに容器を開くという描写がされています。設備がサイオニックによって操作されていることが表現されています。
イリシッドが持ち上げているのは、彼らの幼生です。英語では”Tadpol”と呼ばれ、そのままオタマジャクシという意味です。イリシッドは雌雄同体とも言われますが、厳密には性別という概念を持たないそうです。繁殖については、人生に1,2度の産卵を行うそうですが、ここから生まれた幼生はそのままではイリシッドにはなれません。他種族に寄生し、宿主の体を変化させイリシッドへと変化します。幼生は生みの親ではなく、エルダー・ブレインという存在に管理されます。
エルダー・ブレイン
イリシッドの母ともいえる存在です。イリシッドはコロニーという集合体を形成し、エルダー・ブレインはその長として君臨します。その名の通り巨大な脳みそのような外観ですが、サイオニックによって精神に直接語りかけるため対話も可能です。
圧倒的な知能によってあらゆる状況を先読みすることで、コロニーの戦力を効率的に扱い大構想を成し遂げようとします。先ほどお話しした幼生は、エルダー・ブレインのもとに集められるそうで、エルダー・ブレインがこの幼生を管理する他、食料にもしているそうです。
寄生された者は、数日でイリシッドへと変化してしまうため、幼生に感染するというのは多くの者にとって絶望的な事態となります。
一度暗転し、ムービーは次のシーンへと映ります。
ここでイリシッドの死体が強調されます。イリシッドが強力な存在であるなら不要なシーンです。
ここで描写されているのは、彼らの立場が「復讐者」であることかと思います。
同時に今いる場所がノーチロイドの内部であることも明らかになります。
ノーチロイドが街への襲撃を開始するわけですが、このように神出鬼没な大型船が多数存在した過去の帝国がいかに強大な支配力を持っていたかが伝わるシーンです。また同時に、今は希少なノーチロイドが大都市を襲撃するという点も重要ですね。
真っ昼間にこのような船を運用すれば当然目立つわけですから、この時点でイリシッドが多数を敵に回す覚悟を決めたうえで実力行使に出ていることがわかります。
ノーチロイドが襲撃している街の名前はヤーター。バルダーズ・ゲートではありません。要塞都市として知られますが、漁業と商業も盛んな人口の多い街です。ノーチロイドの触手に触れられた人々は、次々に船内へと転送されポッドに収容されていきます。
この時、一瞬イリシッドの死体が再度映されるのですが、この死体は赤い血で濡れています。赤い血というのは、イリシッドの血液ではありません。イリシッドの血は白です。つまりこの死体は返り血を浴びているわけで、この船が今回の航行の間ですでに戦闘を経験していることがわかります。それも、船内に乗り込まれる形での戦闘です。

ここで追手がかかります。レッド・ドラゴンにまたがって現れるギスヤンキの戦士たちです。
ギスヤンキという種族もまた、イリシッドに負けず劣らず悪名高い種族ですが、その名は高い軍事力、個々の兵士の戦闘能力の高さに裏打ちされています。
彼らこそが、かつてイリシッドの奴隷でありながら反乱を成功させ、帝国を崩壊へと導いた張本人です。イリシッドに抵抗した経緯からサイオニック・パワーに抵抗があるばかりか、彼ら自身もある程度サイオニックを行使することができるという強力な種族です。

これは推測になりますが、ここのシーンで襲撃が始まるとすぐにギスヤンキが駆けつけるというのも、もしかするとすでに一度交戦していて、この船をマークしていたせいかもしれません。
戦艦を操舵しているイリシッドも、この襲撃に対して驚いているという様子ではなさそうです。イリシッドに感情の起伏が乏しいという性質がある以上に、すでにこの襲撃自体が予期されていたものだからというのもあるかもしれません。
ギスヤンキから逃亡するため、イリシッドはまたしても奇妙な装置、トランスポンダーを使って全く違う場所へと転位します。
ギスヤンキたちもこれを追跡し、レッド・ドラゴンが放ったブレスが先程イリシッドが幼生を取り出していた容器に吹きかけられます。すると、液体の表面を舐めるように炎が走って、爆発します。これは揮発性が高い可燃性の液体に見られる特徴ですね。
少し話がそれますが、この燃え方は身近な所では
アルコールやガソリンに見られるものですね。また、ゲーム内では「腐食の塩水」という名前で、酸ダメージを伴います。腐食性も持っていることがわかります。

このときの爆発で、イリシッドが次に起動させかけていたトランスポンダーが発動し、ノーチロイドはアヴェルヌスと呼ばれる場所に流れ着きます。
アヴェルヌスはこの世界の地獄です。先ほど申し上げた、この世界にある次元の一つです。この世界では地獄を「九層地獄」と呼び、文字通り九つの層に分かれています。また、九層地獄を指して「バートル」という名で呼ぶこともあります。
九層地獄、および第一層アヴェルヌス

九層地獄に生きる種族はいくつかいますが、その最も代表的な種族がデヴィルです。九層それぞれの層に支配者となる強力なデヴィル、アーチ・デヴィルがおり各階層を統治しています。
この時ノーチロイドが流れ着いたのは、第一層アヴェルヌス。これも、物語の中で何度も聞くことになりますし、物語に少なからず関与してくるものです。
ちなみに、アーチ・デヴィルというのはあくまでも位の高いデヴィルを指す言葉で、アーチ・デヴィルだから各層の支配者であるということではありません。
地獄とそれ以外の次元を出入りできるのは原則アヴェルヌスだけで、そのため他種族の攻撃を受けやすい場所でもあります。
すこしややこしい話ですが、この世界には悪魔の名を冠する種族が二種類おり、片方は今お話しているデヴィル。もう片方は九層地獄とはまた別の次元の住人であるデーモンです。
デヴィルとデーモンは非常に仲が悪く、ここアヴェルヌスでは常に両者の争いが繰り広げられています。もう長い間終わりなく続いているこの両者の戦争は「流血戦争」と呼ばれ、そのためにアヴェルヌスは強い緊張状態にあります。この名前も何度も聞くことになるものです。
流血戦争がどういったもので、なぜ行われているものなのか、についてはここでは本質からそれすぎるため割愛します。
デヴィルたちがノーチロイドを発見すると、問答無用で攻撃を仕掛けてきます。この素早い反応も、ある意味でアヴェルヌスの緊張を物語る描写かもしれませんね。
以上でイントロシーンの読解と、前提知識の共有を終わります。
ここから、BG3の冒険が始まります。
このブログは、BG3の最後まで全ての読解を終了してから書いております。
今回は所謂「善人エンド」を軸に話を追いかけていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。